
ROG G15 GA503QS(ASUS ROG Zephyrus G15)にて、内蔵キーボード・タッチパッドなどの入力系統が一切反応しないというご相談である。メーカー事前診断では「マザーボード故障」との回答で、通常は基板丸ごと交換のご提案となるケースだが、今回は当店に基板レベルの修理(マザーボード修理)を実施し、復旧しました。
※当店の詳しいご案内は内部ページの[マザーボード修理]をご参照ください
症状の内容
- 内蔵キーボードが無反応(バックライト点灯なし/キー入力を一切受け付けない)
- タッチパッドも動作しない(カーソルが出ない/クリック不可)
- 外付けUSBキーボード・マウスでは一部操作が可能
- OS 起動自体は外部入力で操作すれば進むことがあるが、本体の入力系統は機能していない
外付け入力は生きているため、入力デバイス自体やOSドライバのみの問題ではなく、基板側の制御に原因があると推測された。
これまでの経緯(メーカー診断)
お客様は先にメーカー窓口で点検を実施。結果は「マザーボード不良」の見立てで、基板交換をご案内されたとのこと。コスト面とデータ維持の観点から、基板交換ではなく基板修理をご希望で当店にご相談いただいた。
初期診断の流れ

- 外部要因の切り分け
OS・ドライバ/設定起因の可能性を排除するため、BIOS画面やリカバリ環境でのキー反応を確認。いずれも内蔵キー・タッチパッドは無反応であった。 - 電源・レール確認
スタンバイ3.3V/5V系の立ち上がり、入力系統に関わるレール、リセット信号の有無を測定。 - 基板観察
マザーボード上の入力制御を司るIOチップ(EC/KBC)周辺に注目。周辺の受動部品を含め、熱影響や微小クラックの有無、はんだ状態を顕微鏡下で確認した。
以上から、マザーボード基板上のIOチップ故障が最も濃厚と判断した。
修理内容(基板レベルのマザーボード修理)
- IOチップの交換
当該IOチップ(内蔵キーボード・タッチパッド・電源ボタン制御などを担うコントローラ)を取り外し、適合品に交換。ランド損傷やビア断線がないかを導通テストで確認した。 - 周辺回路の点検・劣化部品の交換
IOチップ周囲の抵抗・コンデンサ・リセット系デバイスなどを測定し、規格外や劣化傾向の部品を合わせて交換。 - クリーニングと再はんだ
フラックス残渣や微細異物を除去し、該当エリアを再フロー。顕微鏡下で全ピンの濡れ・寄り・ブリッジを確認した。 - 初期化・ファームウェア整合性の確認
EC/IO関連の初期化を行い、BIOS設定を既定値に戻してから段階的に機能テストを実施した。
交換後、内蔵キーボードのバックライト点灯を確認、タッチパッドもポインタ移動・クリック・ジェスチャが正常に機能することを確認した。
修理後のテスト項目
- BIOS画面でのキー入力(方向キー・Enter/Esc)
- Windows起動後のキー配列・長押し・同時押し
- タッチパッドの移動/クリック/二本指スクロール/タップ無効化設定の反映
- スリープ復帰後の入力継続性、AC抜き差し・再起動ループの安定性
- 外部USB入力・各ポートの相互干渉有無
問題は再現せず、安定して入力が行える状態でご返却した。データ領域(SSD)には手を加えていないため、データはそのままである。
なぜ起きるのか(原因の背景)
IOチップ(EC/KBC)は、ノートPCの内蔵キーボード・タッチパッド・電源管理などの中枢である。長期間の高温環境、局所的な熱ストレス、静電気や微小な電気的ストレス、液体の浸入履歴などがあると、内部故障やはんだ接合の不良につながり、今回のような「内蔵入力だけが死ぬ」症状が発生することがある。外付けUSB入力が使えるのは、EC経由ではなく別経路(USBコントローラ)で認識するためである。
同様の症状でお困りの方へ
- メーカーで「マザーボード故障」と診断されても、基板交換ではなく基板修理(マザーボード修理)で復旧できるケースがある。
- データを残したい/コストを抑えたい/納期を短縮したい、などのご事情にも、状態によっては対応可能である。
- 症状発生後はできるだけ現状のままお持ち込みいただくと、診断精度と成功率の向上につながる。
当店の基板修理メニューはこちら:[マザーボード修理](内部リンク推奨:アンカーテキスト「マザーボード修理」)。
費用と納期の目安
故障範囲(IOチップ単体不良か、周辺回路の二次故障を伴うか)や交換点数によって変動する。まずは診断のうえでお見積りと最短納期をご案内する。お急ぎの場合は受付時にその旨をお知らせいただきたい。
まとめ(今回のポイント)
- ROG G15 GA503QS、内蔵キーボード・タッチパッドが無反応
- 事前のメーカー診断はマザーボード故障
- 実際の原因はマザーボード上のIOチップ故障
- IOチップ交換+周辺回路の補修によって入力系統が復旧、データは保持
- 同様のケースは基板レベルのマザーボード修理で解決できる見込みがある